アトピー性皮膚炎

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アトピーの検査って何?

アトピー性皮膚炎の検査といえば、みなさんがすぐに思いつくのはアレルギーの検査だと思います。「検査をしたけれどうちの子供アトピーではありませんで した。」とおっしゃるお母さんがおられます。「どうしてアトピーでないとわかったのですか?」と尋ねると「アレルギーの検査をしても何もアレルギーがなかったか ら」という返事が返ってきます。

《アトピー性皮膚炎》とは、通常皮膚の乾燥を伴った慢性の炎症を主体とする皮膚の病気をいいますが、実際にアレルギー検査をしても異常のない方もおられます。アレルギーは、悪化する因子にはなりますが、直接の原因ではないからです。

では、どうして皮膚に炎症が起こるのでしょうか?掻き傷、けが、かぶれなどにより皮膚の表面(表皮)に傷がつくと、表皮の角化細胞から白血球の動きを活発にするケモカインというタンパク質が作られ傷の周りに放出されます。すると血管の中にいた白血球がこのケモカインを感知して「敵が侵入してきたぞ」と気づいてあわてて傷の周りにたくさん集まってきて、その結果として赤く腫れるという病変を作り出します。これが炎症の本体です。通常は傷口からの細菌の侵入を防ぎ、傷を早く治す生体の防御反応ですが、アレルギー体質があると集まった白血球の仲間の「Th2細胞」というリンパ球が、アレルギーを起こす細胞を刺激してアレルギー症状が出現し、さらに炎症が燃え盛ることになるのです。

最近、皮膚の表皮で産生されアトピー性皮膚炎と関係が深いTARCと名付けられたケモカインを簡単に血液検査で測ることができるようになりました。アトピー性皮膚炎の重症度を見た目ではなく数値で知ることができるため、治療上極めて有用な検査となってきました。アレルギー検査には限度があり、アレルギーがあるのに検査で検出されない方もおられますので、アレルギー検査の値ではアトピー性皮膚炎の重症度を正確に知ることはできません。

TARCは、皮膚の炎症を敏感にとらえるため、見かけ上治ったように見えても皮膚の奥深くは火種が残っているかどうかまでわかりますから、まだ積極的な治療を続ける必要があるか否かを決める優れた指標といえます。

ただ、残念なことに、アトピー性皮膚炎の状態が把握できてもきちんとした治療を行っていない方が多くおられます。その最大の原因は、治療の軸となる治療薬の「ステロイド」に対する間違った知識と風潮です。ステロイドは怖い、長い間続けると皮膚が薄くなる、あるいは皮膚が黒ずむ。こんなにアトピー性皮膚炎がひどくなったのは昔ステロイドを使ったからだという情報を耳にするとやはり心配になります。でも心配ありません。アトピー性皮膚炎治療において、ステロイドの副作用だと言われていたもののほとんどは、すべて中途半端な治療のために起こったアトピー性皮膚炎そのものの悪化による症状であることがすでに明らかにされています。悪いのはステロイドではなく、きちんとした治療をしてこなかったためなのです。患者さん側だけでなく、治療する側にも問題がありました。「きつい薬は心配でしょうから安心な弱い薬を出しておきましょう」と言ってきた傾向がありました。弱いから副作用もないとは全く根拠のないことなのですが、お母さん方は安心するでしょう。これは、裏返せば誰が考えても「弱い薬」つまり「あまり効かない薬」にしておきましょうと同じ意味なのです。でも、最近、気管支喘息の治療に吸入ステロイドが使われ優れた効果がみられるようになり、吸入ステロイドが当たり前のように使われ出しました。この吸入ステロイドも昔からある薬で、ステロイドバッシングに遭い、姿を消しかけていた薬ですが、ようやく日の目を見ることになりました。早く塗り薬も完全復活してほしいものです。

最近アトピー性皮膚炎が増えてきましたが、軽症の方が多いと言われています。塗り薬をつければすぐに治っていた方が、間違った思い込みで中途半端に放置してきたことも大いに関係あるでしょう。アトピー性皮膚炎は、必ず正しい治療を受ければ良くなります。塗り薬で良好な状態を続ければ自然治癒が可能なのです。ですから「TARC」を指標にコントロールすることは、アトピー性皮膚炎を早く治す近道になるはずです。アトピー性皮膚炎にはステロイドという特効薬があるのですから、子供たちが痒みから解放されて快適な生活を送れるように薬を正しく使いましょう。

最新の研究結果

新生児期から保湿剤で皮膚をしっかりと保護することで、アトピー性皮膚炎だけではなく小児気管支喘息やアレルギー性鼻炎の発症までも予防できることが国立成育医療研究センターを中心としたグループの研究で明らかになってきました。以前は、アレルギー除去食がアトピー性皮膚炎の進行を防ぐためには不可欠なものとされてきましたが、これだけでは残念ながら満足にいく結果は出ませんでした。むしろ長く制限すればするほど食物アレルギーは治りにくいこともわかってきました。アレルギーの進行には食べ物の除去よりスキンケアの方が重要だったのです。アトピー性皮膚炎の親または兄弟姉妹を持つ新生児は、生後6か月間乳液型保湿剤を塗ってあげることでアトピー性皮膚炎の発症率が低下するのです。きちんと皮膚の手入れをしてあげましょう